
大連経済技術開発区委員会(区役所)
■ 街の中心に3000人収容の図書館と3000人収容の劇場


開発区委員会のすぐそば、開発区の中心に3000人収容可能の図書館と3000人収容の劇場が設けています。2007年訪問したとき、図書館はオープンしたばかりで、その広さにびっくりしたと同時に、斬新な建築デザイン、80台以上のパソコン、収蔵する図書も大学で使う専門書籍があり、大学の図書館に近い充実度があると感じました。

1階には美術館があり、展示会を開いていました。


80台パソコンが並ぶコーナーのすぐ隣が吹き抜け。非常に開放感があります。モダンで近代的な図書館。




子ども専用の図書室も設けています。
■ 大連経済技術開発区委員会


大連経済技術開発区委員会の中の国際会議室、その規模と先端的な設備にも驚きました。壁の両面には巨大なリアプロジェクターで映像を投影しており、各座席にはPCが置いておりました。この会議室で開発区委員会から、城西大学の大連研修の学生のみなさんと一緒に、開発区についての説明を伺いました。
経済技術開発区の街の中心に、「3000人収容の図書館」と「3000人収容の劇場」を配置し、これを街の発展の原動力にしていこうとする市の構想力の大きさには、びっくりしました。「開発区」という工場のイメージとは正反対で、まさに文化都市を創ろうとしていることが分かります。
経済技術開発区の中には、大連理工大学ソフトウェア学院・城市学院、大連大学、大連民族学院などの大学があり、外国語を専門とする中学、高校もあると聞いています。
街を創るときに、大学・図書館・劇場をきちんと創っていこうとする姿勢は、日本の中では消えているのではないかと思います。多くの地方都市では、図書館は単なる住民サービスの一環に過ぎない。立派な図書館を創り、市民の知的水準を高め、これをもって街の発展の原動力としてとしていこうとする熱意やビジョンは、もはやないのではないかと思います。「教育は百年の計」という言葉は、日本の中でどれほどリアリティと説得力を持っているだろうか。
中国との人材の競争、知的競争には、勝ち続けていくことは難しいだろうと瞬間的に理解することができました。
■「夏季ダボス会議」は大連で開催
2007年9月6日から8日、世界の政財界のトップが集う「夏季ダボス会議」は、初めて大連で開かれました。
世界中の約1000社の大企業の経営者、著名政治家、選出された知識人、ジャーナリストが、1月にスイスのダボスで集う「ダボス会議」とは別に、主に新興国とベンチャー企業をテーマに開かれるのは、この「夏季ダボス会議」です。新興国の中で、最も成長の可能性が高い都市として、大連が選ばれたのです。
半導体メーカの最大手の「インテル」が、大連市に300mmウエハー対応の「半導体量産製造施設」を建設することがその前に発表されています。インテル社にとってアジア初となる量産工場となります。投資額は25億ドル(約2800億円)で、外資による対中投資の一件当たりの金額では最大規模となります。インテル社が新たな拠点に工場を建設するのは実に15年ぶりです。
またインテル社は、連理工大学の「ソフトウェア学院(軟件学院)」内に、8インチの半導体製造工程を寄贈し、共に「半導体技術学院」を設立して、「IT+半導体」の2つの専門性を人材を育成します。優秀な技術者が多い大連を選んで、工場とともに人材育成も合わせて、大連に進出します。
大連理工大学が、インテル会長Craig Barrett博士に対して、名誉博士号を授与しました。インテル会長は、それに答えて、「夏季ダボス会議」の際に大連理工大学で講演を行いました。私は、たぶん奥様のすぐ後の座席でその講演を聞くことができました。


Craig Barrett博士は、講演の中で、アジアの初めての工場建設地として、大連を選んだ理由を、「高度な教育を受けた優秀な人材が豊富」であると述べています。
「豊富な高度な教育を受けた優秀な人材」は、大連の最も大きな魅力で、それが磁石のように、世界から多くの企業を引き寄せています。

大連は、日本の私たちが想像する以上に、教育に、人材育成に、投資しています。単に大学や職業教育ではありません。美術館、劇場、図書館などの社会的な教育施設にも膨大な投資をしています。
「安くて豊富な労働力」という既成概念では、大連や中国の潜在力を理解することができません。一番大切な認識が欠落しています。「高度な教育を受けた優秀な人材の豊富さ」こそ、大連や中国の発展の原動力であると感じています。
激しい国際競争の中で、日本の政府は、もっと「国家戦略」を、地方は、もっと「地域戦略」をもたなければならないと思います。